66.7パーミルという特殊な勾配を上り下りするために、いろいろな安全対策や装置が考えられました。この吹付式増粘着装置もその一つで、上り勾配での空転対策のものです。機関車の空転対策ではSLの時代から砂マキ装置が一般的ですが、EF62、EF63にはさらにこの吹付式増粘着装置がプラスされていました。
この装置はレールが雨や霧で濡れていて空転する場合、砂マキ管の横に取り付けられたノズルから空気をレールに吹き付けて乾かして粘着力を回復させようとするものです。EF62では1エンドを前とした場合1軸前,3軸後,4軸前、6軸後に装備されていました。
当初は冷風の吹付でしたが、将来的には空気加熱器を追加装備しヒートガンのような熱風を吹付ける予定だったようで、空気加熱器を取り付ける台座が台車枠に準備してありました。操作は運転室の速度計下にあるスイッチ(NFB)のON,OFFで手動操作です。
この装置は2号からの量産車に装備されたものですが、残念ながら最後まで使い続けることなく何時の頃か途中で取り外されてしまったようです。効果がイマイチだったのか、使用頻度が少ない割に保守が面倒だったのか理由は分かりません。
文化むらの54号の速度計下にはスイッチの跡すらないので(製造当初より搭載されなかった!?)、昭和44年までには廃止されていたのではないのかと推測しています。
文化むらの54号の速度計下にはスイッチの跡すらないので(製造当初より搭載されなかった!?)、昭和44年までには廃止されていたのではないのかと推測しています。
装置の痕跡について
「EF62」
文化むらに保存されている1号、54号の台車には痕跡を見つけることは出来ませんでした。1号の速度計下にはスイッチがあります。銘板がないので断言できませんがこの装置のスイッチの可能性が高いです。
「EF62」
文化むらに保存されている1号、54号の台車には痕跡を見つけることは出来ませんでした。1号の速度計下にはスイッチがあります。銘板がないので断言できませんがこの装置のスイッチの可能性が高いです。
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| 1号の運転室 速度計付近黄色の丸印部分のスイッチ。 |
「EF63」
文化むらのEF63に痕跡を見ることが出来ます。
文化むらのEF63に痕跡を見ることが出来ます。
運転席
通常使う1エンド側の運転席速度計下のスイッチは「他車MMbl」に転用されていますが、1エンド側は残っています。
通常使う1エンド側の運転席速度計下のスイッチは「他車MMbl」に転用されていますが、1エンド側は残っています。
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| 上記の拡大画像 |
他にこの装置を装備、もしくは検討した機関車があったのかどうかは不明ですが、レールが濡れて滑るのなら乾かそうという当時の開発陣の意気込み(考えられることは何でもやる)の感じられる装置だったと思います。
【参考文献】
●EF62・63形式直流電気機関車(量産)説明書 日本国有鉄道臨時車両設計事務所 1964
●EF62・63形式直流電気機関車(量産)説明書付図 日本国有鉄道臨時車両設計事務所 1964
●EF62・63形式直流電気機関車(量産)説明書 日本国有鉄道臨時車両設計事務所 1964
●EF62・63形式直流電気機関車(量産)説明書付図 日本国有鉄道臨時車両設計事務所 1964





初期の頃の63のとある資料で吹付式増粘着装置に対する言及があったのですが、要約すると「有用性が証明されるデータは得られなかったが、今後役に立つ場面が出てくるかもしれないから撤去はしない」との事でした
返信削除まぁ結局そのような機会はなかった様ですが・・・
56FCさん
削除はじめまして!コメントかつ貴重な情報をありがとうございます。なるほど、試験は行ったがやはり効果はイマイチだったのですね。でも、せっかく装備してあるので最悪時には藁をもつかむ気持ちで使うことがあるかもしれないということですか…
当時の技術陣や機関士さんの心労が伝わってくる装置ですね
どうやらEF63一次車(13号機)までは吹付式増粘着装置が付いていたそうです
返信削除製造時期から推測すると、EF62も一次車までは付いていたのかもしれません
56FCさん
削除コメントありがとうございます。たしかに同時期の製造ですから、付いていた可能性は高いですね。電気車の科学などを調べてみたいと思います。ただ、台検が当初から振替式だったとするとありとなしで共通化出来ないので、やはりどこかのタイミングで全車取り外した可能性がありそうですね