下関へ転属してからのEF62の評判と言えば、故障車続出という悪評が目立ちます。
もともと勾配線用機で定格速度の低い設計のものを平坦線で高速、長距離運用することに無理があったということなのですが実際はどうだったのでしょうか。
交友社発行の「電気機関車 1984年10月号」に「EF62形式の保守について」のタイトルで下関運転所車両検査係の方が書いた記事がありますので見てみたいと思います。
それによりますと投入開始の1984年3月25日から8月中旬までにEF62が起こしたA故障は10件だったとあります。
~ 参考 故障区分 ~
A故障 運転事故および運転阻害となった故障
B故障 車両の運転途中で発見したもので運転事故、運転阻害にならなかった故障
C故障 AおよびBに該当しない故障で区または工場内で発見した故障
A故障内訳(1984年3月25日から8月中旬)
① 4月13日 EF62 38 MGGRe抵抗管断線によりMG発生電圧0V
② 5月2日 EF62 18 MG入忘れによりバッテリー放電 力行不能
③ 6月3日 EF62 24 電圧計倍率器コイルの短絡により指針の異常な振れ
④ 6月14日 EF62 23 ノッチ進め用短絡継電器の接触指の折損により進段せず
⑤ 6月22日 EF62 24 支軸油の漏れにより絶縁破壊でHB動作
⑥ 6月27日 EF62 22 空転検知発電機リード線はんだ付け外れて進段せず
⑦ 6月30日 EF62 21 ATS接続箱内ビス取付け不良により誤動作
⑧ 7月12日 EF62 16 MMリード線被覆破れ短絡しHB動作
⑨ 7月26日 EF62 25 No4MMフラッシュオーバー
⑩ 7月31日 EF62 22 E吐出弁内に異物 BP漏れ大
確かに5カ月間にA故障10件は多いようです。6月はひと月で5件も起きており現場では「またかぁ」だったと思います。やむなくEF65を代走させたともあります。
ただ故障内容を見ると②⑦は人為的なミスですし、高速走行によるものは⑤⑧くらいでしょうか。その他はどちらかと言えば経年劣化によるものです。この時点でEF62は製造から20年近くたっており経年劣化故障は信越線でも起きていたものです。
よく言われるフラッシュオーバーは1件のみですが、MT52を使った機関車はEF62に限らずどの形式もフラッシュオーバーを起こしており、EF62のみが突出している感じではありません。
記事によりますと高速化にともなうトラブルとしてはA故障にはなってないが、MMリード線吊コロの異常摩耗や制輪子の脱落(走行中の振動で砂管が制輪子の割ピン串ピンを叩く)も多くあったようです。
経年劣化が原因のものは入念検査や定期取替、一斉検査などを行い、高速化が原因のものは原因究明のうえ対策を施し整備したとあります。
経年劣化が原因のものは入念検査や定期取替、一斉検査などを行い、高速化が原因のものは原因究明のうえ対策を施し整備したとあります。
交友社発行「電気機関車 1985年2月号」の「現場だより 下関運転所」の記事では、故障が出るたび一斉点検を繰り返し、その結果9月半ばにはほぼ終息して、最終的には同区のEF66よりも故障が少なくなったとありました。
やれやれ、これで少しはEF62の名誉挽回になったのではないでしょうか。
やれやれ、これで少しはEF62の名誉挽回になったのではないでしょうか。
【出典・参考文献】
●「電気機関車1984年10月号」交友社
●「電気機関車1985年2月号」交友社
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