昭和59年2月のダイヤ改正では、EF62が東海道、山陽筋の荷物列車の牽引にあたるため、高崎第二機関区の26両が下関へ転属するという、思いもよらぬ動きがありました。EF58が置き換えられた理由と、後釜にEF62が選定された経緯について改めて調べてみました。
当時、一般的に言われていたのは、
(1)EF58は老朽化しており取替えが必要
(2)電気暖房にすることでSG要員を廃止する
(3)信越線貨物の廃止で電暖付のEF62に余剰が生じるので転用
主な理由はこんなところだったと思います。
この経緯について、交友社発行の電気機関車1984年6月号に「EF62 東海道・山陽へ -決定までの事情-」のタイトルで運転局車務課の方が書かれた記事がありましたので要約してみました。
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(※原文ではありません)
1、置換えの背景について
現在の牽引機EF58,EF61は非自動SG付のため、2人乗務となっているが、
近代化推進委員会において昭和60年初までに電暖化し、SG要員の合理化を
実施することが方向付けられていた。置換えの代替機は新製で考えていたが、
57.11の輸送改善で余剰となるELを改造することで投資の抑制に努めることとした。
2、改造車種の選定
選定の条件
(1)東海道・山陽の荷物列車牽引機として、40両程度必要なため同形式で
40両の捻出が可能なこと
(2)電暖装置の搭載が可能なこと
(3)部品の有効活用ができ、改造費が低廉であること
(4)将来、EF65との混運用を予想し同程度の性能を有するもの
3、選定の結果
EF60とEF70が候補としてあげられたが、電暖装置搭載のスペース関係から
日本海縦貫線及び鹿児島本線で捻出されるEF70が最適とされた。
種車については残存寿命、車体や台車の老朽化度合いを考慮してEF7029号以降、
EF701001号以降とすることになった。
4、改造工事にあたっての基本的な考え方
(1)改造費を極力抑えるために、車体、台車、主電動機など再生可能な部品は
技術的な判定を加えた上で再用していく。
(2)電暖電源はEF58の廃車で発生するSC7形電暖用インバータを転用する
(3)改造工事は定期検査併施で行う
(4)機関車の制御方式としては改造費、車体ぎ装スペースの関係から
チョッパ制御を採用し、主電動機の接続は1S3P2GとしてEF65と
同等の性能を確保する
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この記事を見ますと、置換えはEF58等の老朽化というよりは要員の合理化が主だった目的のように感じますが、同じ時期に発行された 車両電気協会編「車両と電気35(6)(410)」1984-06には「EF62形式投入に関してのはなし」として下関運転所の方の記事が掲載されています。
理由はEF58の検査周期と老朽化の問題、及び電気暖房化(取扱いの容易、重量軽減、保守の簡易化、暖房の均一性)のためとありました。また、イカロス出版「電気機関車EX」2018-Vol.07号でも置き換えを目前にしたEF58が次々と故障を起こしてリタイヤする様子が記載されています。やはりEF58老朽化と電気暖房化が目的なのは定説通りのようです。
EF70の改造転用につきましては、種車まで決まっていたうえ、交友社発行 電気機関車1982年6月号の「昭和57年度電気機関車改造工事及び本社計画特別修繕工事について」の記事に新規工事として「EF70形式を直流電気機関車に改造」と掲載されています。当初はEF70を改造転用することでほぼ決定していたようです。
また、選定の条件(4)にあるように置換えは一時的なものでなく、ある程度長く使うことも視野に入れていたことが伺えます。この時期はまだ今後も機関車の需要があるとみなされていたのでしょうか?次回は、この状況の中でEF62が浮上した経緯について引き続き調べてみたいと思います。
「EF62 下関へ その経緯について(その2)」へつづく
【参考文献】
●「電気機関車1984年6月号」交友社
● 車両電気協会編「車両と電気35(6)(410)」1984-06 車両電気協会
●「電気機関車EX 2018-vol07」イカロス出版
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