★はじめに
EF62の特徴といえば、動輪のC-C配置が1番最初に上がると思いますが、2番目はブロワーを上げる方も多いかと思います。
私は生まれも育ちも長野でしたので、物心付いた頃から電気機関車と言えばEF62とEF64しか知りませんでした。大きなブロワーを響かせて走る姿=電気機関車でしたので、進学で上京した際にゴハチやPF、66の発車シーンを見て、何て静かに走る電気機関車なんだろうとカルチャーショックを受けた覚えがあります。特に当時国鉄最強の電気機関車だったEF66はさぞかし大音響で発車するのだろうと期待していた分、意外な静かさに驚かされました。
ここでは、勾配機の特徴であったブロワーについて、わかる範囲で書いてみたいと思います。
★EF62のブロワーは2種類
EF62のブロアは2種類あります。
(1)主電動機用送風機(MMBl)
(2)主抵抗器用電動送風機(MRBl)
発車や力行の際に大音量でウォーンと唸っていたのは(2)の主抵抗器用電動送風機の方です。これはEF62に限らずEF63、EF64も同じでした。この送風機の呼び方ですが、資料によってまちまちのようです。ふたつとも電動送風機なのですが、何故か主電動機用の物は(1)のように電動が抜けている記述が多いです。(電動電動と重なるからでしょう??)また送風電動機と記されているものもありました。
★主電動機用送風機(MMBl)
EF62の主電動機用送風機は MH91A-FK34A が2台使われていました。
MH91Aは電動機の形式、FK34Aは送風機の形式です。
【諸元】
MH91A電動機
方式 直流直巻補極付
主極数 4
形式 開放自己通風形
連続定格
出力 20KW
電圧 1500V
電流 15.5A
回転数 1800rpm
FK34A送風機
形式 シロッコ形(64枚羽根)
有効静圧風 160mmAg
風量 170立方メートル/min
このMH91-FK34電動送風機はED60からの定番送風機で、ED60~62、EF60~65の各形式で使われました(EF62は末尾Aの改良形)。EF62~EF64以外はこの送風機で主電動機と主抵抗器の両方を冷却していましたが、EF62~EF64では主電動機のみで呼び方も主電動機用送風機となっています。送風機は騒音防止の観点からシロッコファンをターボファンに変えたFK102送風機(8枚羽根 外観ほぼ同じ)も登場し、EF63は当初FK34だったものをほぼ全車これに交換、その他EF64、EF65の一部にも搭載されていました。(MH91I-FK102)
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電動送風機の位置 (EF60~65) |
★風道とたわみ風道
主電動機用送風機(MMBl)で発生させた冷却風は床下の風道を通って、たわみ風道から主電動機に入ります。2台の送風機にそれぞれ2個のファンが付いていて、片方でNo.1、No.2(またはNo.5、No.6)、他方でNo.3(またはNo.4)に冷却風を送ります。
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EF6254の風道(床下 2エンド助手席側) 【撮影場所】碓氷峠鉄道文化むら |
船底のようなものが風道です。この上に送風機があります。奥にたわみ風道も見えます。
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EF6254のたわみ風道(No.4電動機) 【撮影場所】碓氷峠鉄道文化むら |
床下(固定)-台車(可動)をつなぐため蛇腹式になっています。
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EF62たわみ風道位置図 |
EF62は台車ごとの主電動機の方向がそろっているので、たわみ風道も同一台車内では同じ方向にあります。
★主抵抗器用電動送風機(MRBl)
EF62と言えば、このブロワーを思い出される方も多いのではないでしょうか。発車の際にフォーンという大音量で唸るブロワーです。大きな音を響かせながら、ゆっくりゆっくり加速する姿はとても頼もしく、目の前を通過し姿が見えなくなってもしばらくは聞こえているほど大きな音でした。
EF62では主抵抗器用電動送風機としてMH108A-FK61Aが4台搭載されていました。MH108Aは電動機の形式、FK61Aは送風機の形式です。
【諸元】
MH108A電動機
方式 直流直巻補極付
主極数 4
形式 自己通風、たて形
連続定格
出力 4.5KW
電圧 375V
電流 16A
回転数 1750rpm
FK61A送風機
形式 軸流形(10枚羽根)
有効静圧風 45Ag
風量 250立方メートル/min
公開されている1エンド側運転席のすぐ後ろにある機械室扉の窓を覗くと見えます。画像は懐中電灯で照らしながら窓ガラス越しに撮ったものですが、電動送風機はほとんど見えていません。
ここからはEF63の主抵抗器用電動送風機ことです。ある時、碓氷峠鉄道文化むらを訪ねたところ、庫内に展示してあるEF63 10の主抵抗器用電動送風機が…あれ??無くなってる!?
下段の金網とその上のカバー1枚が外され、電動送風機が取り外されています。

手前1番(山側),4番(海側)ともに外されています。主抵抗器への送風口の構造が良くわかり勉強になります。左右には主抵抗器へ続く太いケーブルが整然と並んでいます。こんな光景は現役時代なら入場中に関係者しか見ることが出来ないものだと思うのですが。。すごいです。
職員の方に伺ったところ、運転体験機用に部品取りしたとのこと。しかし、これはこれで貴重な状態を見ることが出来ました。碓氷峠鉄道文化むらのHPにもあるように、運転体験機の保守や交換部品の確保が年々難しくなってきているそうで、いずれ静態展示のEF63の機械室は空っぽになる日が来る!?のかもしれませんね。そして庫の奥には取り外した電動送風機がありました。
銘板をズームで拡大してみます。文字が見て取れますが間違いありません。
いや~、廃車になって20年近くが経った今、こんなものが見れるとは思いませんでした。EF62はMH108A-FK61Aで同じ10枚羽根ですが、少し形状が違います。
★ブロワーはいつ回るのか?
勾配機の特徴的なブロワーですが、どのタイミングで回るのでしょうか?最近の鉄道模型はDCCを組み込んで音を出すことが出来ますが、その場合とても気になるところです。
★主電動機用送風機(MMBl)
主電動機用送風機は、運転室後方の制御箱にあるスイッチを手動ONで回転、手動OFFで停止です。走行中はONで停車中はOFFにしていました。よく発車間際に機関士の方が席を立って、右後ろの方に手を伸ばしているのはONにするためです。ONにするとヒューンという音がしました。
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EF62 54 1エンド側制御箱のスイッチ群 矢印が主電動機送風機のスイッチ 【撮影場所】碓氷峠鉄道文化むら |
主電動機送風機、主抵抗器送風機のスイッチは良く取扱うので黄色のガバーが付けてあります。
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EF62 53 2エンド側制御箱スイッチ群 矢印が主電動機送風機のスイッチ 【撮影場所】篠ノ井機関区 |
主電動機送風機は主電送機の冷却の他、電動機内部で発生するガスの排出も目的だったようです。ブラシなどから発生するガスが溜まるとフラッシュオーバーを誘発するとか…。
それにしてもこのスイッチですが、発車、停車のたびに取扱うのに、機関士席から遠い、どちらかといえば助手席側にあります。どうやら設計の段階では入定位で考えられていたようで、EF62形電気機関車説明書では発行年度は違っても記述は入定位となっていました。後に停車のたびにOFFにするようになったのは騒音防止のためで、送風機が運転室のすぐ後ろにあるので、室内もかなりうるさかったようです。国鉄時代の信越線貨物は途中駅で2時間、3時間の停車はざらだったのでOFFにしたくなりますよね。
さて、ここで疑問が湧いてきます。重連時の補機の送風機はどうしていたのでしょうか?わざわざ降りて後ろもOFFしに行ったのでしょうか?篠ノ井機関区機関士OBの方に聞いてみたら、補機は回しっぱなしだったそうです。
ちなみにEF63はさすが重連運用が基本なので、画像のようなスイッチが付いていました。
速度計の下の左側スイッチ「他車~」で補機の送風機がON、OFF出来る優れもの。もともとは違う機能のスイッチでしたが改造したようです。
主電動機用送風機ですが、電動機(MH91A)は定格が1500Vのため、起動は2段起動でした。(直列→並列 ※直列、並列とも最初だけ起動抵抗入り)
なお、主電動機送風機はOFFのままでも走行出来ます。
★主抵抗器用送風機(MRBl)
EF62のブロワーと言えばこれですが、主抵抗器の冷却のためのブロワーです。制御箱の主抵抗器送風機のスイッチをONにしておけば、後は逆転器、ノッチの位置により自動で回転し、自動で停止します。走行中はずっと回転しているような感じがしますが、回転は「主抵抗器使用時+クールダウン時」ですので、走行中でも主抵抗器を使っていないときは停止します。なお、この送風機を回さないと主抵抗器は発熱で溶断してしまうので、送風機のスイッチがONになっていないと力行、発電ブレーキともに回路が構成されないようになっていました。(ONにしないと自走できない)
■回り始めのタイミング
(1)力行、発電においてノッチを引いた時
(2)パンタグラフが上がった状態で主抵抗器送風機スイッチをONした時、もしくは主抵抗器送風機スイッチがON時に パンタグラフを上げた時
(2)は回路の構成上回ってしまうらしいのですが、篠ノ井機関区で良く見たパン上げシーンでは、上がっていきなり回ることは無かったような覚えがあります。これはパンタグラフをスイッチ代わりにするのはよろしくないとの配慮からのようで、パン上げの際にはスイッチを切る手順になっていたものと思われます。機関士さんによってはMGやコンプレッサーもOFFにして上げる方もいらしたそうです。
■停止のタイミング
(1)力行において、主抵抗器を抜けた時(SPの最終18ノッチとPの最終24ノッチ)
(2)ノッチオフの時
実際にはこの条件になった時からクールダウン時間を経て停止します。クールダウン時間はタイマーで最大180秒(3分)まで設定出来たそうですが、篠ノ井車は180秒、高崎車は90秒に設定されていたようです。ただ、時代、時期で変えていたという話も聞きました。
こうやって改めて書いてみると、なんだか難しい感じになってしまいましたが、DCCでプログラミングするのでしたら、発車でサウンドON、定速もしくは惰行になったらOFFするようにしておいたら実感的になると思います。
ただ、例外がひとつあります。それは横川の下り列車発車時で、まずEF63が動き出した後、EF63から指示でEF62は力行ノッチを引きますので、動き始めてからブロワーが回ることになります。これは、発車時に前後同時力行でのぎくしゃくを防止する配慮からだそうですが、EF62の発車シーンを見慣れた者にとっては違和感ありの発車でした。この様子は動画投稿サイトやジェイアール東日本企画が制作した碓氷峠ビデオなどで見ることが出来ます。この例外があるので、碓氷峠を再現される方は自動化せず、ファンクションに登録しておくのが良いかもしれません。
★送風機表示灯
ブロワーは主電動機用、主抵抗器用どちらも重要ですので、その状態がわかるよう運転席に表示灯がありました。
公開されている1エンド側運転台です。メーター類上部にあるのが表示灯です。
右から2番目が主抵抗器の送風機(MR)、3番目が主電動機の送風機(MM)の表示灯です。この表示灯はEF62、EF63、EF64(初期)ともほぼ同じで、ブロワー停止時に赤色で点灯します。(その他の表示灯は動作時に点灯)
EF63(運転体験車)で点灯状況を見てみましょう。
主電動機用、主抵抗器用、共に停止しているので赤色に点灯しています。
2つとも動作中(回転中)で消灯しています。
主抵抗器用送風機のみ停止しています。体験運転中にトロッコ列車シェルパくんを退避していると、タイマーが切れてこの状態になることがあります。(個人的にはこの主抵抗器用送風機が止まる体験が嬉しかったりします)
おわり
【参考文献】
●工作局車両設計事務所「国鉄車両諸元一覧表」1977年
●関西鉄道学園編「EF60,61電気機関車」鉄道科学社 1981年
●日本国有鉄道運転局車務課「直流電気機関車検修指導書第一分冊」1984年
●長野鉄道学園「EF62形電気機関車説明書 (附)車警ツナギ」1973年
●高崎鉄道管理局「EF62形電気機関車説明書 (附)車警ツナギ、EF60形との相違点」1981年
●中部鉄道学園編「EF64電気機関車(附)EF62の要点」鉄道科学社 1966年
●電気車研究会編「電気車の科学 Vol.16 No.11 1963-11」「電気車の科学 Vol.16 No.12 1963-12」電気車研究会 1963年
●笹本健次「RM POCKET17 碓氷峠」ネコ・パブリッシング 1997年























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